PR TIMES
PR TIMES、ReactページのビルドをWebpackからViteへ段階的に移行。フィーチャートグルで本番試験し、ビルド時間は3~4分から30秒に
プレスリリース配信サービスを運営するPR TIMESは、React で実装されたいくつかのページのビルドに使っていたWebpackを、一部のページを除いてViteへ置き換えた。本番用ビルドはおおよそ3~4分、開発環境で変更が反映されるまで30秒~1分かかっていたうえ、開発時の高速化のために導入したesbuildにはHMRの機能がなく、変更のたびにリロードが必要だった。Webpackが今後積極的に開発されていく雰囲気ではなさそうなことも理由の一つとなった。開発環境への導入から、デプロイjobへの組み込み、フィーチャートグルでの本番試験、リファクタリングデーでのフルリグレッションテストを経たリリース、Webpackビルドの削除まで段階的に進め、dev serverの起動は1秒未満、ビルド時間は30秒になった。
課題
Webpackの本番ビルドに3~4分、開発時の反映に30秒~1分。esbuildにはHMRがなくリロード必須
アプローチ
Viteを開発環境から導入し、並行ビルドとフィーチャートグルでの本番試験を経て段階的に切り替え
効果
dev server起動は1秒未満、変更反映は1秒未満のHMRに。ビルド時間は3~4分から30秒へ
背景
PR TIMESでは、いくつかのページがReactで実装され、Webpackでビルドされていた。HTMLの配信はバックエンドサーバーが担い、フロントエンドとバックエンドのリポジトリは分かれている。最大の課題はビルド時間の遅さで、本番用のビルドはおおよそ3~4分、開発環境でのwatchビルドで変更が反映されるまで30秒~1分かかっていた。開発環境の改善のために一度esbuildが導入され、watchビルドは1秒以内に終わるようになったが、esbuildにはHMRの機能が組み込まれておらず、作者も本体に実装する予定は少なくとも直近ではないと明言していた。そのため変更のたびに画面のリロードが必要で、複数ステップのフォームやモーダルのUI変更では状態が失われてしまう。開発環境ではリロード自体に数秒かかる場合も多かった。さらに、Webpack founderのsokra氏がVercelで後継のTurbopackの開発に取り組んでいるなど、Webpackが新しい課題に応える開発を積極的に進める雰囲気ではなさそうなことも移行を後押しした。
移行のプロセス
移行は以下の順序で段階的に進められた。
- 開発環境への導入: esbuildのwatchビルドをVite dev serverに置き換え。HTMLをバックエンドが配信する構成のため、ViteのBackend Integrationのガイドに従いjsをエントリポイントにし、バックエンドのテンプレートに必要なscriptを追記。環境変数はvite-plugin-environment、CSSはemotionの設定を実施
- プロダクションビルドの調整: バックエンドでmanifest.jsonを参照する構成を避け、エントリファイル名を[name].jsに固定。キャッシュ対策はデプロイごとに更新されるIDをクエリパラメータで付与する既存の仕組みを利用
- パフォーマンス確認: バンドルサイズは1%程度増、Web VitalsはLCPが微増、他は変化なし
- デプロイjobへの組み込み: ステージング・本番のデプロイ時にWebpackとViteの両方でビルドし、成果物を同時にS3へアップロード
- フィーチャートグルでの本番試験: 既存のフィーチャートグルにWebpack – Vite切り替え用のフラグを追加し、社内メンバーのみで本番確認
- 本番リリース: 月に1度のリファクタリングデーでフルリグレッションテストを行い、フラグを外してリリース
- Webpackビルドjobの削除
移行前後の変化
| 指標 | Before | After | |
|---|---|---|---|
| ビルドツール | Webpack(開発時はesbuild) | Vite | |
| dev serverの起動 | 3~4分 | 1秒未満 | |
| 開発時の変更の反映 | フルリロードが必須 | 1秒未満のHMR | |
| ビルド時間 | 3~4分 | 30秒 | |
| バンドルサイズ | — | 1%程度増 |
結果
移行により、開発体験とデプロイ時間が大幅に改善された。
- dev serverの起動: 3~4分 → 1秒未満
- 開発時の変更の反映: フルリロードが必須 → 1秒未満のHMR
- ビルド時間: 3~4分 → 30秒
デプロイjobからWebpack分の3~4分が省略され、ビルドは30秒程度で終わるようになった。ビルド時間の短縮は、フロントエンドのプレビュー環境の自動生成にも大きく貢献している。一方でバンドルサイズは1%程度増え、LCPも微増しており、パフォーマンスだけを見ると改善とは言えないとしている。
学び
ビルドツールの変更は、エンジニアやQAにとっても影響範囲が不明瞭になりやすい。PR TIMESはステージングや自動テストだけで判断せず、両方のバンドルを並行してデプロイし、フィーチャートグルで社内限定の本番試験を挟むことで、ユーザー影響を出さずに切り替えた。バックエンド統合もまずはファイル名固定というライトな実装で始めている。
